はじめに
デジタルアーカイブやデジタルヒューマニティーズの分野では、IIIF(International Image Interoperability Framework)に対応したビューアの選択は重要な課題です。Mirador や Universal Viewer(UV)といった高機能なビューアが広く知られていますが、「もっと軽量で、すばやく表示できるビューアがほしい」という場面も少なくありません。
そこで紹介したいのが Tify です。Tifyは、ドイツのゲッティンゲン大学図書館(SUB Göttingen)を中心に開発されている、軽量・高速なIIIFドキュメントビューアです。
Tifyとは
Tifyは、IIIFマニフェストを読み込んで資料を閲覧するためのWebベースのビューアです。Vue.jsで構築されており、MITライセンスのもとオープンソースとして公開されています。公式サイト(https://tify.rocks/)でデモを試すことができます。
最大の特徴は、その軽量さと表示速度です。JavaScriptバンドルのサイズが小さく、読み込みから表示までの時間が非常に短いため、ユーザーにストレスを感じさせません。特にモバイル端末での閲覧体験は優れており、レスポンシブデザインによってスマートフォンやタブレットでも快適に操作できます。
主な機能
IIIF Presentation API対応
TifyはIIIF Presentation API 2.1および3.0の両方に対応しています。既存のIIIFマニフェストをそのまま利用できるため、すでにIIIF対応の画像配信基盤を持つ機関であれば、すぐに導入が可能です。
ページナビゲーションとサムネイル
複数ページの資料をサムネイル一覧から選択して移動できます。書籍や手稿など、ページ数の多い資料を閲覧する際に便利です。サムネイルパネルは画面横に表示され、直感的なナビゲーションが可能です。
目次(Structures)表示
IIIFマニフェストにStructures(Range)が定義されている場合、目次として表示されます。章立てのある書籍や、セクションごとに区切られた資料において、目的の箇所へすばやくジャンプできます。
OCR全文検索
OCRデータが関連付けられたマニフェストでは、全文検索機能を利用できます。検索キーワードを入力すると、該当箇所がハイライト表示され、資料内の情報を効率的に探索できます。これは特に、大量のテキストを含む歴史資料の調査において強力な機能です。
メタデータとアノテーション
マニフェストに含まれるメタデータ(タイトル、著者、所蔵機関など)を構造的に表示します。また、アノテーション(注釈)の表示にも対応しており、研究者が付与した情報を閲覧することが可能です。
導入の容易さ
Tifyの大きな利点の一つは、埋め込みの手軽さです。基本的には、HTMLに1つのスクリプトタグを追加し、マニフェストURLを指定するだけで動作します。
<div id="tify"></div>
<script type="module">
import Tify from 'https://cdn.jsdelivr.net/npm/tify/dist/tify.js';
new Tify({
container: '#tify',
manifestUrl: 'https://example.org/manifest.json',
});
</script>
npmパッケージとしてもインストールでき、Vue.jsプロジェクトへの組み込みも容易です。設定オプションも豊富で、表示言語や初期ページ、パネルの表示・非表示などを柔軟にカスタマイズできます。
他のIIIFビューアとの比較
IIIFビューアの代表格であるMiradorやUniversal Viewerとの違いを簡単に整理します。
Mirador は、複数のマニフェストを同時に開いて比較閲覧ができる高機能なビューアです。研究用途での利用に適していますが、その分、ファイルサイズが大きく、表示速度はやや遅くなります。プラグインによる拡張性も高い反面、初期設定の複雑さがあります。
Universal Viewer(UV) は、画像だけでなく音声や動画など多様なメディアタイプに対応しています。汎用性が高い一方、Tifyと比較するとバンドルサイズは大きくなります。
Tify は、これらのビューアと比べてシンプルで軽量という立ち位置です。複数マニフェストの同時比較やマルチメディア対応は持ちませんが、単一の文書を快適に閲覧するという用途においては最適な選択肢の一つです。デジタルアーカイブのポータルサイトやコレクション展示ページなど、閲覧の快適さを重視する場面で威力を発揮します。
利用事例
Tifyは主にドイツの図書館・文化機関で採用されています。開発元であるゲッティンゲン大学図書館(SUB Göttingen)をはじめ、複数の機関がデジタルコレクションの閲覧インターフェースとしてTifyを利用しています。軽量であることから、既存のWebサイトへの組み込みが容易で、CMS(コンテンツ管理システム)との統合事例も見られます。
まとめ
Tifyは、「軽量・高速・モバイル対応」を軸としたIIIFドキュメントビューアです。高機能なMiradorやUVとは異なるアプローチで、閲覧のシンプルさと快適さを追求しています。
IIIFマニフェストを手軽に表示したい場面、モバイルユーザーへの対応を重視する場面、既存のWebページへ軽量なビューアを埋め込みたい場面において、Tifyは有力な選択肢となるでしょう。MITライセンスで提供されているため、商用・非商用を問わず自由に利用できます。
公式サイト: https://tify.rocks/ GitHub: https://github.com/tify-iiif-viewer/tify デモ: https://tify.rocks/demo.html