はじめに

デジタルアーカイブや人文学研究の分野では、歴史地図や古写真などの資料を地理的な文脈の中で閲覧したいというニーズが増えています。IIIF(International Image Interoperability Framework)は画像の相互運用性を高めるための国際標準ですが、近年ではIIIF Georeference Extensionによって、IIIF画像に地理座標情報を付与できるようになりました。

今回紹介する IIIF Georeference Vieweriiif_geo)は、こうした地理参照付きIIIFコンテンツを対話的な地図上で可視化するためのWebアプリケーションです。

IIIF Georeference Extensionとは

IIIF Georeference Extensionは、IIIFマニフェストやキャンバスに地理座標情報を埋め込むための仕様です。これにより、歴史地図などのIIIF画像を現代の地図上に正確に重ね合わせることが可能になります。

従来、歴史地図のジオリファレンスにはGIS専用ソフトウェアが必要でしたが、この拡張仕様を活用することで、Webブラウザ上で手軽に地理参照コンテンツを閲覧・比較できるようになります。

IIIF Georeference Viewerの機能

動的なURL読み込み

クエリパラメータを使って、任意のIIIFマニフェストやGeoJSONファイルをURLから直接読み込むことができます。例えば以下のようなURLでデモを確認できます。

デモサイト: https://nakamura196.github.io/iiif_geo/

対応するデータ形式

  • IIIF Manifest — IIIF Presentation API 3.0のマニフェスト
  • IIIF Canvas — 個別のキャンバスオブジェクト
  • Linked Places Format — 歴史的な地名データの標準フォーマット
  • GeoJSON — 広く使われている地理データフォーマット

インタラクティブな地図表示

LeafletおよびMapLibre GLを使用した地図表示では、マーカーのクラスタリングによって大量のポイントデータも効率的に表示できます。ベースマップの切り替えも可能で、航空写真や地理院タイルなど複数の背景地図を選択できます。

分割ペインレイアウト

画面を分割して、左側に地図、右側にIIIF画像のディープズーム表示(OpenSeadragon)を配置するレイアウトに対応しています。歴史地図と現代地図を並べて比較する際に便利です。

ディープズーム

OpenSeadragonによる高解像度画像のディープズームに対応しています。巨大な歴史地図でも、細部まで拡大して閲覧することが可能です。

多言語対応

日本語と英語のバイリンガルUIを備えており、国際的な利用にも対応しています。

技術スタック

本ツールは以下の技術で構成されています。

技術用途
Nuxt 4 / Vue 3アプリケーションフレームワーク
Leaflet2Dタイル地図表示
MapLibre GLベクタータイル地図表示
OpenSeadragonIIIF画像のディープズーム
GitHub Pagesホスティング

Nuxt 4の静的サイト生成(SSG)機能を利用してGitHub Pagesにデプロイしているため、サーバーサイドの運用コストが不要です。

ユースケース

デジタルヒューマニティーズにおける活用

  • 歴史地図の比較: 江戸時代の古地図と現代の地図を重ね合わせて、都市の変遷を視覚的に把握
  • 文化財の地理的分布: 美術館・博物館のコレクションをIIIF経由で地図上にマッピング
  • フィールドワーク支援: 調査対象地域の歴史的な地図資料をブラウザで確認

図書館・博物館での活用

IIIFに対応したデジタルアーカイブを持つ機関であれば、所蔵する地図コレクションのURLを指定するだけで、地理参照ビューアとして活用できます。独自のシステム開発なしに、既存のIIIFコンテンツに地理的な可視化機能を追加できるのが大きな利点です。

使い方

  1. デモサイトにアクセス
  2. IIIFマニフェストのURLやGeoJSONのURLをクエリパラメータで指定
  3. 地図上でマーカーをクリックしてコンテンツを閲覧
  4. 必要に応じて分割ペインでIIIF画像と地図を並べて比較

ソースコードはGitHubで公開しています。

まとめ

IIIF Georeference Viewerは、IIIFの地理参照拡張仕様に対応し、歴史地図やデジタルアーカイブのコンテンツを地図上で手軽に可視化するツールです。Nuxt 4やLeaflet、OpenSeadragonなどのモダンなWeb技術を活用し、ブラウザだけで高度な地理空間表示を実現しています。デジタルヒューマニティーズ分野での研究・教育に活用いただければ幸いです。