TL;DR
RAWGraphs はブラウザ上で動作するオープンソースのデータ可視化ツールである。CSV/TSVファイルをドラッグ&ドロップするだけで、30種類以上のチャートタイプからデータを可視化でき、SVGやPNG形式でエクスポートできる。プログラミング不要で、デジタル・ヒューマニティーズ(DH)研究におけるデータ分析の入口として最適なツールである。
RAWGraphsとは
RAWGraphsは、イタリアのミラノ工科大学(Politecnico di Milano)の DensityDesign Lab が開発したオープンソースプロジェクトである。Apache 2.0ライセンスで公開されており、誰でも無料で利用できる。
主な特徴は以下の通りである。
- 完全ブラウザベース:インストール不要で、Webブラウザさえあれば即座に利用開始できる
- データプライバシー:データはサーバーに送信されず、すべてクライアントサイドで処理される
- 30種類以上のチャート:一般的な棒グラフや散布図に加え、Alluvial Diagram、Bumpchart、Sunburstなど高度なビジュアライゼーションにも対応
- D3.jsベース:内部的にD3.jsを使用しており、生成されるSVGは高品質
使い方
RAWGraphsの利用は4ステップで完結する。
1. データの読み込み
RAWGraphsの公式サイトにアクセスし、CSV/TSVファイルをドラッグ&ドロップするか、テキストエリアに直接ペーストする。Googleスプレッドシートからの読み込みや、JSONデータにも対応している。サンプルデータセットも用意されており、初めての利用でもすぐに試すことができる。
2. チャートタイプの選択
データの性質に応じて、適切なチャートタイプを選択する。カテゴリ別に整理されており、「Hierarchy」「Time Series」「Distributions」「Correlations」「Networks」などから目的に合ったものを選べる。
3. マッピング設定
データの各列をチャートの視覚要素(X軸、Y軸、色、サイズなど)にドラッグ&ドロップでマッピングする。この直感的な操作が RAWGraphs の最大の魅力である。
4. エクスポート
完成したビジュアライゼーションをSVG、PNG、またはJSON形式でダウンロードする。SVG形式であれば、Adobe IllustratorやInkscapeでさらに編集を加えることもできる。
DH研究における活用例
書誌データの可視化
図書館のOPACデータや書誌データベースから取得したCSVデータを使い、出版年代ごとの分野別出版数をStreamgraphやStacked Area Chartで可視化できる。時代ごとの学術トレンドの変遷を一目で把握するのに有効である。
歴史的ネットワークの可視化
手紙の差出人と受取人のデータから、Alluvial Diagramを作成すれば、知識人ネットワークの構造を視覚的に示すことができる。例えば、江戸時代の儒学者間の書簡ネットワークなどを分析する際に役立つ。
テキスト分析結果の表示
形態素解析やトピックモデリングの結果をCSV形式で出力し、RAWGraphsでTreemapやCircle Packingとして可視化すれば、テキストコーパスの語彙構造を直感的に理解できる。
文化財データの分析
博物館や美術館の所蔵品メタデータ(年代、地域、素材、技法など)を多次元的に可視化し、コレクションの特性を分析できる。Parallel Coordinatesを使えば、複数の属性を同時に比較できる。
他ツールとの比較
| 特徴 | RAWGraphs | Tableau Public | Google Charts |
|---|---|---|---|
| 料金 | 無料(OSS) | 無料(制限あり) | 無料 |
| インストール | 不要 | 要デスクトップアプリ | 不要(API) |
| プログラミング | 不要 | 不要 | JavaScript必要 |
| チャート種類 | 30+ | 非常に多い | 30+ |
| データプライバシー | クライアント処理 | クラウド | クラウド |
| カスタマイズ性 | SVG編集可 | 高い | コードで制御 |
RAWGraphsは「手軽にデータを可視化したいが、プログラミングは避けたい」という研究者に最も適している。より高度なインタラクティブ可視化が必要な場合はTableau PublicやD3.jsの直接利用を検討するとよい。
まとめ
RAWGraphsは、DH研究者がデータ可視化の第一歩を踏み出すのに理想的なツールである。ノーコードで高品質なビジュアライゼーションを作成でき、データがサーバーに送信されないためプライバシー面でも安心である。研究成果の発表や論文への図表作成にも活用できるため、ぜひ一度試してみてほしい。